男子大学生の日常

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近況報告0821:宗教社会学の勉強②

宗教社会学の解明対象は、人々の宗教的意識・行動の実態、およびそれとその他の意識・行動との関連である。無論、ミクロ的基礎に基づいて、個々の人間が集合した際のマクロな挙動についても解明する必要がある。

 

欧米の社会学の理論を簡単に読んだ感じだと、ミクロなものについては、信仰者の増減を説明する理論(宗教が従属変数)や、宗教的意識・行動が他の意識・行動(幸福感や健康、社会貢献など)に及ぼす効果を分析するもの(宗教が独立変数)が多い。マクロなものについては、宗教集団(教団)の類型化やライフサイクル論があるらしい。

 

①宗教が従属変数の研究

最初の信仰者の増減を説明する理論については、世俗化理論→合理的選択理論(宗教市場理論)→文化理論?という感じで来ている。

世俗化(secularization)理論は、近代化による合理化で非合理的な宗教が社会に及ぼす影響力が衰退していったという理論。実際、意識調査を見れば衰退しているのは明らかだが、宗教や地域によっても異なり、まだまだ機能しているよねということで批判された。

合理的選択理論は、世俗化理論を裏返したもので、近代化によって合理的な思考が広まり、合理的な理由から宗教を信仰する人がいるという説明。これは宗教経済学やStarkが研究し、合理的な人々(=需要)と教団(=供給)の間の需給関係の結果として捉える宗教市場理論につながる。

しかし、Edgell(2012)では上記2つの理論は現実を説明できていないと批判し、「制度論」「生きた宗教」「宗教文化ツールと象徴的境界」の3つの文化的宗教社会学を紹介している。Ammerman(2020)は「実践理論×生きた宗教論」を前面に主張している。

 

→Edgell(2012)とAmmerman(2020)は必須文献か。沼尻(2002)があまりにも分かりやすかったため、これに上記の2つの文献を読めば、欧米の理論の動向はほとんど理解できると思う。

あと、宗教経済学はちゃんと数理モデルとデータによる実証で体系的に議論していると思うので確認しておく。Starkの議論も合理的選択理論を敷いているので理論化が上手くいっており、大いに参考にすべきだと思う。

また、社会全体の信者数の変動をマクロな社会変動で説明しようとする理論の構築が目立つが、「クロスセクションでどのような属性の人が信仰しやすいのか」はあまり研究されていない気がする。結局、「なぜ人は信仰するのか」という行為論を解明出来たら、全ての問いは解決するのだろうが。

 

①’マクロな現象

マクロレベルについては、宗教のレベルを、教団レベル、行事レベル、個人レベルと3つに分ける考え方があったが、制度宗教、民俗宗教、スピリチュアリティ的な感じで対応しているのだろうか。正直研究のモチベーションによるので、どうでもいい。

上記でも述べたが、宗教集団のサイクル論などが検証されている。

スタークの議論は制度宗教と個人の合理的選択を包括的に理論化しようとする営みであり、大変参考になる。教団や行事などは信仰する個人がいるからこそ成立しているものであり、両者はほとんど対応していると考えてよい。また、個人レベルも個人の宗教性についてだから、従属変数としての宗教研究に含めてよい。

 

②宗教が独立変数の研究

上記のような半ば混沌とした状況の中で、宗教変数を独立変数として他の変数に与える効果を見る研究の方が盛んになっている。(青年期に焦点が絞ってあるが、)Pearce et al.(2019)にまとめられている。

こちらは、効果が人口属性変数(ex. 人種、エスニシティジェンダー、社会階層)によって異なるという交互作用仮説の検証が進められている(Wildeが主張)。

 

〇他の点

最近、認知科学や進化生物学の知見を宗教研究に取り入れようとする動きがあるらしい。さすがにヒトと霊長類を比較するとかは興味ないが、宗教心理学や社会ゲノミクスくらいだったら興味があるので、合っているかもしれない。

 また、アメリカの社会学のレビュー論文で、アメリカのプロテスタントに偏っているといるという批判があったが、日本人である自分にとってはむしろラッキーかもしれない。ひとまずは、東アジアの中で着実に実態を認識していく。「宗教上の理由に起因する紛争はどのように解決されるべきか」とか「移民と宗教」といったことにも関心はあるので、最終的にはグローバルに見ていきたい、

 

〇自分の関心

・人々が人生の目標をどのように形成しているのか?何に依拠しているのか?

・日本人の宗教への信頼が極めて低いのはなぜか?

・国内の信者が増えていくメカニズムはどのようなものか?特にクリスチャンホーム以外の人がどのように信仰を持つに至るのか?そのような伝道活動が効果的なのか?①

・宗教心に与える遺伝の影響はどれくらいか?①

・学歴の高い人ほど宗教を信仰しないのか(世俗化理論の同一コーホート版)?①

・宗教によって出生率は異なるか?②

 

①宗教的意識・行動についての研究の最終目標は、「誰がどのようなメカニズムで信じるようになるのか」を明らかにすることなので、そのメカニズムを数理モデル化する必要がある。それを目指す。

②宗教的意識・行動→他の変数という研究は、従属変数はなんでも設定できるので、単発的に興味のある変数を設定して調べていく感じになるのだろう。個人的には①の方が関心がある。

 

対象としては、日本の宗教一般に関心がある場合と、日本のキリスト教に関心がある場合がある(自分の中で)。欧米と日本では事情が異なるので、研究対象は熟考していく必要がある。

 

〇今後やること

まだまだ宗教研究の全貌が肌感覚で分かっていないので、とにかく量に当たるしかない。Edgell(2012)とAmmerman(2020)はしっかり理解しておきたいのと、海外のジャーナルの宗教研究をたくさん調べて問いの立て方を体感しておいた方が良さそう。あとは、理論・モデルに沿って研究していくために、宗教経済学の本を参考にする必要がある。最近の『宗教の経済学』を読んでみよう。