個人的に好きなドラマ映画10
社会問題に踏み込むドラマは質的な社会学とよく似ているので好きだ。また、私は感受性が豊かではないので、せめて映画くらいで感動したい。
歴史的な事件にフォーカスした歴史映画、中でも戦争にフォーカスした戦争映画、歴史上の人物にフォーカスした伝記映画に該当するものはそちらに入れている。
公開年順にいってみよう
①『カッコーの巣の上で』(1975)
ルイーズ・フレッチャーの演技が素晴らしい。
また、本作はアメリカン・ニューシネマとしての位置づけが与えられているが、ただの反体制でなく、それ以上に、生きる喜びや人間のアイデンティティについての力強いメッセージが魅力だ。
ストーリーが複雑でないことにイライラしてしまいかねないが、それ以上に強いメッセージ性を持つ素晴らしい作品だ。
②『アメリカン・ビューティー』(1999)
コメディにカテゴライズされる作品はほとんど見ないのだが、これは面白かった。『普通の人々』と似ているが、こちらはその上位互換だと感じている(失礼すぎ)。
「現代アメリカ社会の闇をコミカルに描きだす」らしいが、もう公開20年たってる。
といっても、伝統的な核家族の価値観が崩壊していること自体は今でも起きてることだ(同性愛などはホットなテーマだ)。現在はその価値観もかなり浸透し、社会的に承認されているが、家族分離や同性愛などの自由な価値観が承認されていない中で、その欲望を表面的に取り繕う内に綻びが生まれてくるという時代の移り変わりをうまく描いている。
また、単純にストーリーとして面白くて、家族がそれぞれの欲望に従ってバラバラになっていき、行き違いによって思いもよらない事件も起こる。にもかかわらず、彼らがそれを後悔しているようには思えず、むしろ幸福になったのではないかとすら思わせるストーリー展開が良い。
③『シックス・センス』(1999)
サスペンスに入れようか迷ったが、心温まるドラマの要素が強いのでこちらに入れた。一方で、どんでん返しもある。
とても見やすいし、面白いが、なぜか途中で若干のホラーになるのはやめてほしい。
M・ナイト・シャマラン監督の最新作『OLD』が今度日本で公開される。ビーチである必要があるのか不明だが、楽しみだ。
④『女神の見えざる手』(2016)
面白い!すばらしい!そんなに有名じゃないと思うが、私は大好き。
どちらかというと娯楽作品であるが、全体的にバランスが良い。
監督も脚本家も大して有名ではないのがまたいい。
ジェシカ・チャステインの演技もすばらしい。
とにかく見てほしい。
⑤『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(2014)
オスカー作品賞受賞作。
監督や演者の演劇に対する考え方やリスク、批評家への批判など、現代の映画や演劇にも通ずると考えられる要素が散在しており、面白い。
ストーリー自体も面白く、現実と想像を混ぜる脚本も素晴らしい。
この映画を見て、一層映画業界の人々を尊敬するようになった。
⑥『セッション』(2014)
アメリカのトップ音大の鬼教官と弟子の話。J・K・シモンズの迫力がすごすぎる。
ストーリー全体が面白いが、なんといっても終盤の15分間くらいがめちゃくちゃ良い。
展開もテンポよく進むのでとても見やすい。
何回でも見たくなる映画。
⑦『ルーム』(2015)
そんなに有名じゃないが、実はオスカーでノミネートされてる。
予告編を見れば、監禁されているところからどうやって脱出するのか、子どもはどのように外の世界の概念を形成するのかといったことに興味をそそられるが、この映画の良いところは、むしろ助かった後の後半のストーリー。
助かってちゃんちゃんではなくて、その後の母親の苦悩が描かれる。特に、TV記者の質問攻めのシーンは良い。
⑧『ムーンライト』(2016)
A24の映画で、ここ5年の映画の中では、最も絶賛されている作品の1つではないだろうか。
確かに良い話なのだが、具体的にどの部分が面白かったかと言われるとピンとこない(そういう良さがあるということ)。
1つだけ確かに言えることは、本作は黒人差別やLGBTQ差別を大きく扱った映画ではないということ。黒人以外が出てこないので、直接的に差別されているシーンは出てこないし、ゲイに対する差別もない。むしろ、純粋な愛を感じるラブロマンス的映画だ。
⑨『バーニング』(2018)
サスペンスに入れても良いのだが、少し毛色が違うのでこちらに入れた。
村上春樹の『納屋を焼く』原作の映画で、映画ではビニールハウスを焼くことになった。村上春樹は全然読んだことない(そもそも小説をめったに読まない)が、「これが村上春樹の世界観かー」となった。
指導教員がおすすめしてきたので見てみたが、面白かった。モヤモヤするのが嫌いな人もいるだろうが、僕は見終わってから色々考えるのが好きなので、解釈の幅が広い本作は好きだ。
また、スティーヴン・ユァンの演技が上手く、人間味の無い嫌な金持ちをうまく演じている。
また、韓国の社会問題にも触れていて、興味深い。関係ないが、最近、韓国社会に関心があって、『韓国社会の現在』という本が分かりやすくて面白かった。
⑩『万引き家族』(2018)
是枝監督の作品では一番好き(『海街diary』も好きだけどね)。
何と言っても安藤サクラの演技がやばい。特に、警察署での取り調べのシーンは鳥肌が立った。
ストーリーでは、万引きや貧困は核ではあるのだが、各登場人物がそれぞれ異なる複雑な事情を持って暮らしてるので、それぞれのストーリーに面白さがあり、考えさせられる。逆に言えば、万引きで繋がっているとも言えるか。
ラストも完全なハッピーエンドとは言えないのが、現実の社会の困難さとマッチしていて良い。若干の解釈の余地も残されている。